巣立ちの時
日本では七夕ですな。
一時帰国を目前に、実家から毎日のようにネット経由で連絡が入る。
たまたま日本のニュースを読んでいる時で、大雨で大変だろうなーと思っていたら呼び出し音。
出てみると案の定 母から。三重県弁丸出しでお送りいたします。
「おはよう。そっちは朝やんな? いま日本は ものすごい雨やに」
_そうみたいやな。神戸も電車運休みたい。
「○○(神戸の家)区は避難勧告が出とるんやに」
_そうなんや。擁壁大丈夫かな。なんかあったらご近所さんが連絡くれると思うけど。
「それよりな、ツバメが巣立ったんさ」
_はい?
「昨日の夕方に、最後までおった2羽が飛んだんさ。雨が降っとんのに」
_はぁ。
「それがさな。こんな大雨やのに飛んでしもて、どこ行ったんか探したんさ」
_雨の中を・・・巣立ったツバメを探しに行ったと・・・?
「そうさ。雨やのに可哀想やんか。そしたら家の横の電線に居ってさ」
_・・・見つけたんや。
「2羽がな、1羽に見えるくらいにひっ付き合って止まっとるんやに。自分の巣に帰ってきたらええのに。おじいさんも心配やもんで何回も見に行っとるんやに」
_はぁ。
「もう暗なって来て大雨やのに。親鳥が心配して飛び回っとるんさ。」
_それをずっと雨の中観察していると。
「そうさ。なんとかして雨凌げるコトは出来やんかなぁと思て」
_二人で雨の中をウロウロしてると。
結局深夜から翌朝まで何度も何度も雛達を見に外に出て、朝いちばんの5時過ぎくらいに無事を確認したと本日も連絡があった。
今日は家の裏手から引いてある配線に止まっているそうだ。
ここは軒ではないのだけれど、雨風を凌げる場所なので安心らしい。
オンナはオバハンの年齢に差し掛かると、何でもかんでも「育つもの」が愛しくなる傾向にある。
これは生殖器官を持つものの特性上、正しい姿と思われる。
オバハンは精神的におっさん化するし、オッサンはおばはん化するのだろうか。
昔はそういうタイプではなかった父も、母と一緒になってツバメの心配をしていたと言うのだ。
パニックになって逃げるからやめなさいと忠告したので愚挙に出ることはなかったが、この老夫婦は虫取り網にビニールを付けて雨を遮ってやろうと思案していた。
もちろん雨の中、電線に止まる2羽を救おうという愛からの行動なんだけど。
忠告を聞いてくれてよかった。
いやいやいやいやー。
愛って生きるための動力なんやな、と再確認したわー。