お針子 作業部屋

  帰国したお針子です

値打ち

千代田衿に続き、一昨日には道中着を納めた。
帰りがけに、仕事を預からせてもらった。

なんだか仕事が切れない。
「今週末着用予定なんで大急ぎ!」とかの仕事は最近は無いので、バタバタするコトも少ない。
しかしながらここ数カ月の仕事の無さを考えるに、ちょっと気色悪いくらい仕事が回ってくる。

ただ、仕立て変えや洗い張りの仕立て直しばかりで、新しい着物ではないので
胴裏や八掛けだけでは呉服屋としての儲けは少ないだろう。
(もちろん各所マージンで回収はあるだろうけれど)


ワタクシの担当さんが「アナタ、もっと請求してもイイのよ!」とこっそり耳打ち。
他のヒトが出来ないモノを回されてるんだから、と言うコトだけでなく
呉服屋から商社系の呉服部門に出した時の仕立賃からすれば、ワタクシの請求額は安いと。
それはもともとその商社の仕立てをやってた身とすれば、ある程度知っていたんだけど。


で、悩みつつ月末なんで請求書を書いとるワケです。
えー、そんならこないだ脳みそをふりしぼった仕立て代をいくら請求すべきかなぁ・・・
と、考えつつ。

「プロなら仕立て代をマケたらアカン」と教え込まれたモノの、このご時世だもん。
呉服屋潰れたら困るし、お客さんに高額請求されても申し訳ない。
和裁士のする仕事はお誂えなのだけど、高いのか安いのかワタシ自身の感覚も鈍ってる。


納品の帰りにデパートの中を通った。
シーズン中に値札見てモノ欲しげに見つめていただけのケープが値下げされてた。
冬の始まりに一目惚れしたケープだけど今年の冬は寒すぎたし、
懐具合の寂しい時期に13500円は高すぎた。
再値下げで元値の半額。これなら買える。悩んでいる。
夕方もう一度行ってみて、残ってたら縁があるので買おうと思ってる。

しかしてこの金額、アパレル業界に儲けがあるのか。
ワタクシの仕立て代も、独身時代の頃よりもかなーりディスカウントしている。
多分書いたらマズイくらいの値下げだと思う。
でもこれは業界全体のコトなのでワタクシだけのコトではナイ。
業界全体の仕事量が極細りで、仕立屋家業の数が釣り合わなかったから
起きたコトでもあるのだろうと思う。
ワタクシの場合、どこの馬の骨とも知れぬ縫い子に仕事を回して下さった呉服屋への
恩義もあってのコト。

世の中の季節先取りディスカウント販売形態とデフレ経済に毒されてるのか??
考えると、デフレはとっても身近なコトだったなぁ、と今さらながらに思う次第。



「値下げは自分の価値を下げる」
大先生、あなたの言ったコトは正しいのでしょう。
でも誂えの仕立がミシンに駆逐されてる昨今、価値を見失わずにいるのは難しいです・・・